ものすごくゆっくりと、でも確実に

とある税法学者/漫画家の誕生

2014.02.15
前回エントリを受けて、とある事業所得者/漫画家/税法学者の誕生を、最初の5年間ほどのシミュレーション・ドラマの形で描いてみよう。
言わずもがなのことながら、「漫画家」である必然性もなく、給与所得者兼事業所得者であっても(さらには事業所得者兼事業所得者であっても)話のミソは変わらず — したがって日本全国無慮6000万人から8000万人くらいに通底し適用できる話である。


漫画好きなA君は、高校生の時から漫画を描いては各漫画賞に応募し始め、高3時に3万円の奨励賞、大1時に10万円の入選賞金を獲った。その頃はアルバイトを初めとして如何なる収入もなかったので、自分がそれぞれ3000円/1万円の「源泉徴収」をされていることなど知りもしなければ知ろうともしなかったし気にもしなかった。 ※1

大4時、A君は漫画道1本に懸けていて就職戦線には参加していなかった。とりあえず大学は卒業できそうだったが、それ以外に努力を傾ける必要はなく、月12万のどうでもいいバイトで家賃6万のアパートに住み、すべてのクリエイティヴィティは漫画を描くことに注ぐことにしていた。ついでながらA君は、昔ながらのケント紙・Gペン・スクリーントーンで漫画を描き、漫画雑誌/コミックを資料/学習の意味からも買い、収入のうち月9千〜1万5千円ほどはその費用に消えていた。

大卒/アルバイトの23才の漫画家のタマゴ候補者時代、ついにとある賞でグランプリを獲り100万円の賞金を手にしたA君は次の年、ちょいと小耳に挟んだところから「自分の払っている税金」のことを意識して調べてみて愕然とした。前年アルバイト給与+賞金100万円の収入のあった彼はおおよそ12万の個人所得税を今年払ってしまっており、それはいまさらどうこうアタフタ駆けずり回っても取り返しようのないものだった。

彼は悔しく思った — バイト先で「源泉徴収」とかいうもので月々2、3千円天引きされてるのは知ってた。そういうもんだと思ってた。だが、5年も6年もがんばって打ちこんできた漫画への賞金:3万10万100万に対して、ざっと11万の — 税率10%掛けの所得税を取られているなんて!オレがケント紙・Gペン・スクリーントーン、雑誌・コミックス・作画資料にどんだけカネかけたと思ってんだよ!?

後の祭り、である。
税法的に言えば、彼は自分の好きずきの娯楽行為として漫画を描いていた。その漫画がカネを生もうが生むまいが、それは偶然/巡り合わせ次第である。彼は税法的に「漫画家である」わけではなかったので、彼が漫画を描くために遣ったカネは、彼が娯楽のために遣った他のカネと何ら変わるところはない。税法的に言えば、彼は0円の必要経費で100万円の収入を生み出したのと大差ない...
— A君は以上のことを、たった2冊の本を読むだけで理解した。

 

A君はそこから、小中高大時代にも一度も抱いたことのない熱意を持って猛勉強を開始した。「勉強」「学習」が本当の「死活問題」になることなど学生(あるいは現代日本人)にはほとんどないが、A君はこの勉強が本物の死活問題であると感じたのだった。彼は自分にはどうでもいい、カンケーない話だと思っていた、字面を見るからに厭わしくとっつきにくい「基礎控除」「給与所得控除」などの用語とコンセプトを、何度も何度も噛み締めるようにして理解した。彼は覚えている限りの「必要経費として計上」できたはずの買い物をシミュレーション的にリストアップし、111万1千円の賞金収入に対し最低でも10万円以上の必要経費を計上し、よってもって所得と所得税を相応に低く収めることができたはずだと理解した...
彼は羊のように奴隷のように無力化・無害化されていた自分の情けないひ弱さを発見して慚愧と激怒を感じたのだった。


と、もう十分長い。
A君の物語はまた次回続けよう。


※1
「10万円の賞金」を「9万払い+1万の所得税源泉徴収」とするか「10万払い+1.1111...万の所得税源泉徴収」とするかは出版社の勝手である









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